実技試験について、出題範囲として公式に書かれている文書は1つしかありません。厚生労働省の「キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」の、実技試験の欄です。そこに並んでいるのは基本的技能が4つ、相談過程において必要な技能が8つ、合わせて12の技能で、その下に27項目の細目がぶら下がっています。論述も面接も、公式に「範囲」と言えるのはこの27項目だけです。
この記事は、第33回(2026年11月1日)の実技を受ける人に向けて、その27項目の構成と原文を整理したものです。キャリアコンサルティング協議会(キャリ協)と日本キャリア開発協会(JCDA)はどちらも同じPDFを掲載しており、実技の範囲は団体で分かれていません。分かれるのは試験の形式と評価区分の名称のほうです。
先に断っておくと、この細目には、何点取れば合格なのかも、どう書けば点になるのかも書かれていません。書かれているのは、できることとして求められている技能の一覧です。当サイトが作った解答を模範として示すこともしません。
実技試験の範囲は「必要な技能」1項目だけで、その下が2つに分かれる
この細目のPDFは学科試験と実技試験に分かれていて、実技試験の欄に置かれている大項目は「Ⅰ キャリアコンサルティングを行うために必要な技能」の1つだけです。その下が「1 基本的技能」と「2 相談過程において必要な技能」の2つに分かれ、さらにその下に技能が並びます。
| 区分 | 技能の数 | 細目(①②…)の数 |
|---|---|---|
| 1 基本的技能 | 4 | 8 |
| 2 相談過程において必要な技能 | 8 | 19 |
| 合計 | 12 | 27 |
基本的技能の冒頭には、4つをまとめて求める一文が置かれています。
相談者に対する支援を適切に行うために、以下の1)から4)までの基本的技能を有していること。
相談過程において必要な技能のほうには、8つを何のために使うのかが書かれています。関係構築から合意までを1文で言い切っている部分です。
キャリアコンサルティングを進めるに当たって、次の1)から8)までの技能を用いて、相談者との関係構築、相談者の抱えている問題を把握・整理し、当該相談の到達目標、相談を行う範囲、相談の緊要度等について、相談者との間に具体的な合意を得ることができることの応答と相談過程を意識できること。
基本的技能の4つは、面接の土台にあたる
基本的技能は次の4つです。細目の数は技能によって偏りがあり、カウンセリングの技能が3項目でいちばん多く、相談過程全体の進行の管理は1項目だけです。
| # | 技能 | 細目 | 何を求めているか(原文の要旨) |
|---|---|---|---|
| 1) | カウンセリングの技能 | 3 | 受容的・共感的な態度と誠実な態度を維持し、相談者が自分に気づき成長するよう相談を進める/課題を相談者と合意し共有する/情報提供・教示・フィードバック等の積極的関わり技法を適切に展開する |
| 2) | グループアプローチの技能 | 2 | グループを活用したキャリアコンサルティングの意義と進め方を理解して行う/職業意識の啓発や自己理解・仕事理解を効果的に進めるために行う |
| 3) | キャリアシートの作成指導及び活用の技能 | 2 | 意義・記入方法・留意事項を説明でき、適切な作成指導ができる/ジョブ・カード等の作成支援と情報提供ができる |
| 4) | 相談過程全体の進行の管理に関する技能 | 1 | 相談過程のどの段階にいるかを常に把握し、段階に応じた支援方法を選んで進行・管理する |
4つ目は細目が1項目しかない代わりに、面接で見られている進め方そのものを言っています。
相談者が抱える問題の把握を適切に行い、相談過程のどの段階にいるかを常に把握し、各段階に応じた支援方法を選択し、適切に相談を進行・管理することができること。
なお、グループアプローチとキャリアシートの2つは、15分のロールプレイの中で直接扱う場面がほぼありません。実技の範囲に入っているという事実と、面接で問われる場面があるかどうかは別のことです。
相談過程において必要な技能の8つは、相談の順番そのもの
2つ目の区分は、相談を始めてから終わるまでの順に並んでいます。1) から 8) を上から読むと、それがそのまま面談の流れになります。
| # | 技能 | 細目 | 段階 |
|---|---|---|---|
| 1) | 相談場面の設定 | 4 | 環境を整え、受容的な態度で親和関係をつくり、目的と前提を共有し、到達目標・範囲・緊要度を合意する |
| 2) | 自己理解への支援 | 2 | 職業興味や価値観の明確化、経験の棚卸し、環境の分析/アセスメントの選択・実施と結果の解釈 |
| 3) | 仕事理解への支援 | 3 | 仕事は職業以外の活動も含むという理解/職業・労働市場の情報の収集と活用の助言/職務や役割の理解の支援 |
| 4) | 自己啓発の支援 | 2 | インターンシップ・職場見学・トライアル雇用等の意義の理解を支援し、実行を助言する |
| 5) | 意思決定の支援 | 3 | ライフプランを踏まえた中長期のキャリア・プラン/中長期と短期の目標設定/能力開発の情報提供とプラン作成 |
| 6) | 方策の実行の支援 | 2 | 方策の目標と意義の理解を促す/進捗を把握し、進め方や見直しを助言する |
| 7) | 新たな仕事への適応の支援 | 1 | 実行後のフォローアップを、状況に応じて行う |
| 8) | 相談過程の総括 | 2 | 適正だと判断できる時点で終了を伝えて納得を得る/相談者の自己評価とキャリアコンサルタント自身の自己評価 |
- の3つ目には、キャリアコンサルティングの前提として何を相談者に伝えるかが書かれています。ここは論述でも面接でも使われる一文です。
主体的なキャリア形成の必要性や、キャリアコンサルティングでの支援の範囲、最終的な意思決定は相談者自身が行うことであること等、キャリアコンサルティングの目的や前提を明確にすることの重要性について、相談者の理解を促すことができること。
論述の設問は、この細目のどこを見ていると読めるか
ここからは当サイトの読み方です。**細目と設問を結ぶ対応表は、両団体からも厚生労働省からも公表されていません。**以下は設問文と細目の文言を突き合わせた推定であって、公式の採点基準ではありません。
キャリ協の論述の設問3は、次の文言です。
設問3 あなたが考える相談者の問題(①)とその根拠(②)について、相談者の言動を通じて、具体的に記述せよ。(20 点)2×10 点
問題の把握を求めているという意味で、基本的技能の 4) 相談過程全体の進行の管理と、相談過程の 1) 相談場面の設定の④が扱っている内容に重なります。設問4(今後の方針)は、相談過程の 1)④で言う到達目標・相談を行う範囲・緊要度の合意と、5) 意思決定の支援が扱う範囲に近い書き方を求めています。JCDAの問い2と問い3も、それぞれ同じ位置にあたります。
言い換えると、論述で書くことは細目の外にはありません。細目に無い枠組みを持ち込むより、1) から 8) の順番と語彙で自分の答案を点検するほうが、公表されている資料に沿った準備になります。設問ごとの要素の分解は、論述の書き方(キャリ協)と論述の書き方(JCDA)にまとめています。
細目に書かれていないもの
範囲を読むときに大事なのは、書かれていないことを書かれていることと混ぜないことです。この細目に無いものは次のとおりです。
- 面接の評価区分の定義。キャリ協は態度・展開・自己評価、JCDAは主訴・問題の把握・具体的展開・傾聴という名称を公表していますが、各区分が何を指すかの定義文はどちらも公表していません。技能検定キャリアコンサルティング職種の資料にある定義を、国家資格の根拠として使うことはできません
- 区分ごとの配点の内訳。公表されているのは、実技150点満点で90点以上、論述は配点の40%以上、面接は評価区分ごとに満点の40%以上という条件までです(論述の配点と合格基準)
- 模範解答。両団体とも公開しておらず、キャリ協は配点・試験の内容に関する問い合わせにも答えないと明記しています
- どの技能が何問出るかという配分。細目は技能の一覧であって、出題数の指定ではありません
団体ごとの形式と評価区分名の違いはキャリ協とJCDAの違いに整理しています。
まとめ — 次に取る行動
- 細目のPDFを開き、実技試験の欄(1) から 8) が並ぶ2ページ)だけを印刷する。学科の範囲と混ぜない
- 自分が書いた論述の答案を、相談過程の 1) から 8) の語彙で読み返す。どの段階のことを書いたのかが言えない箇所は、設問が求めている要素から外れている可能性が高い
- 面接の準備では、基本的技能の 1) カウンセリングの技能と 4) 相談過程全体の進行の管理を軸にする。グループアプローチとキャリアシートは範囲には入っているが、15分のロールプレイで直接問われる場面は想定しにくい