日本キャリア開発協会(JCDA)の論述で最初に落とせないのは、問い1の指定語句5つを「すべて使用」し、使った語句に「アンダーラインを引く」という設問文の条件です。内容の良し悪し以前に、問い1は語句の使用が指示として明文化されています。問い2は①問題と②根拠で10点ずつ、問い3は、問い2で答えた内容を踏まえた方針で15点、合計50点です。

この記事は、JCDAで第33回(2026年11月1日)を受ける人に向けて、問い1〜3の文言を分解し、各問いで満たすべき条件を整理したものです。根拠は、JCDAが公開している第30回の論述問題用紙(テキストが取れる版)、試験要項の合格基準、厚生労働省の出題範囲細目の原文です。第31回・第32回は画像PDFのため設問文の逐語引用はしていませんが、指定語句は原本を目視して列挙しています。

模範解答や解答例はありません。JCDAもキャリアコンサルティング協議会も模範解答を公開しておらず、当サイトが作った文章を「模範」として示すことはしません。設問文から逆算できる要素だけを書きます。

JCDAの論述は「逐語記録を読み、設問に解答する」— 前半共通+後半A・B

試験要項では、論述の出題形式は次のように書かれています。

記述式 逐語記録を読み、設問に解答する

出典: 日本キャリア開発協会「試験要項」

第30回の問題用紙では、逐語記録が【事例の前半(共通部分)】と【後半A】【後半B】に分かれていて、設問の冒頭で次のように指示されています。

設問 下記の【事例の前半(共通部分)】と【後半A】、【後半B】を読んで、以下の問いに答えよ。 (【後半A】、【後半B】は、同じ相談者(CL)、同じ主訴の下で行われたケースである)(50 点)

出典: 第30回 キャリアコンサルタント試験 実技(論述)試験問題(日本キャリア開発協会)

同じ相談者・同じ主訴で、キャリアコンサルタントの対応だけが違う2つの後半を読み比べる構造です。問い1はこの「対応の違い」を問い、問い2と問い3は相談者の問題と今後の方針を問います。逐語記録の本文はJCDAの著作物なので、ここには転載しません。実物は出典URLから開けます。

問い1(15点)— 指定語句5つを「すべて使用」し「アンダーラインを引く」

問い1の文言は次のとおりです。

[問い1] 事例の【後半A】と【後半B】ではキャリアコンサルタントの対応の違いにより展開が変わっている。 【後半A】と【後半B】の対応の違いについて、下記の5 つの語句(指定語句)すべてを使用して、 解答欄に具体的に記述せよ(同じ語句を何度使用しても可。また語句の使用順は自由。解答用紙に記述する際には、使用した指定語句に必ずアンダーラインを引くこと)。(15 点)

出典: 第30回 キャリアコンサルタント試験 実技(論述)試験問題(日本キャリア開発協会)

設問文が付けている条件を分けると、次の4つです。

条件設問文の根拠
後半Aと後半Bの「対応の違い」を書く(一方だけの評価ではない)「対応の違いについて」
対応の違いが「展開」をどう変えたかに触れる「対応の違いにより展開が変わっている」
指定語句5つをすべて使う(何度使っても可・順序自由)「すべてを使用して」「同じ語句を何度使用しても可」「使用順は自由」
使った指定語句にアンダーラインを引く「必ずアンダーラインを引くこと」

指定語句は問題用紙に印刷されています。第30回は次の5語です。

指定語句 好意的関心 決めつけ 内省 気持ち 励まし

出典: 第30回 キャリアコンサルタント試験 実技(論述)試験問題(日本キャリア開発協会)

第31回と第32回の問題用紙は画像PDFなので設問文の逐語引用はしませんが、指定語句を原本で目視した結果は次のとおりです。

指定語句(5語)出典
第30回(2025年11月)好意的関心・決めつけ・内省・気持ち・励まし上記PDF
第31回(2026年3月)思い込み・悩み・共感・背景・自問自答JCDA 第31回 論述問題PDF(記事末)
第32回(2026年7月)気持ち・説得・好意的関心・内省・価値観JCDA 第32回 論述問題PDF(記事末)

3回とも、相談者の内面に関わる語と、キャリアコンサルタントの関わり方に関わる語が混ざっています。後半Aと後半Bのどちらの対応にどの語が当たるかを、逐語記録の発言に即して振り分けると、5語を無理なく使えます。語句を使ったかどうかは機械的に確かめられるので、書き終えたら5語に線が引かれているかを最後に数えてください。

問い2(20点=10点×2)— ①問題と②根拠を「相談者の言動に基づいて」

[問い2] あなたが考える相談者の問題(①)とその根拠(②)について、相談者の言動に基づいて、具体的に 記述せよ。(20 点: 10 点×2) ①問題 ②その根拠

出典: 第30回 キャリアコンサルタント試験 実技(論述)試験問題(日本キャリア開発協会)

配点が「10 点×2」と明記され、解答用紙も①問題と②その根拠の欄に分かれています。①は「あなたが考える相談者の問題」なので、相談者本人が語った主訴をそのまま書くのではなく、キャリアコンサルタントの視点で捉えた問題を書きます。②は「相談者の言動に基づいて、具体的に」なので、逐語記録の中の発言や振る舞いを指して根拠にします。①と②が対応していないと、10点ずつの片方が要素を満たしません。

問い3(15点)— 問い2を踏まえた、「相談者の成長に向けて」の方針

[問い3] [問い2]で答えた内容を踏まえ、今後あなたがこのケースを担当するとしたら、相談者の成長に向けてどのような方針でキャリアコンサルティングを進めていくか記述せよ。(15 点)

出典: 第30回 キャリアコンサルタント試験 実技(論述)試験問題(日本キャリア開発協会)

問い3には条件が2つ付いています。1つは「[問い2]で答えた内容を踏まえ」で、問い2で挙げた問題に対応していない方針は条件から外れます。もう1つは「相談者の成長に向けて」で、キャリアコンサルタントが答えを与える方針ではなく、相談者が自分で気づき決めていく過程を支える方針が問われています。

この「成長」の考え方は、厚生労働省の出題範囲細目に書かれた基本的技能の言葉と重なります。

相談者との人格的相互関係の中で相談者が自分に気づき、成長するよう相談を進めることができること。

出典: 厚生労働省「キャリアコンサルタント試験の試験科目及びその範囲並びにその細目」実技試験の範囲

問い3の方針は、相談場面の設定から相談過程の総括までの8つの技能(細目の「相談過程において必要な技能」)のどれを、どの順で使うかという形で書くと、細目の言葉と対応します。8つの技能の読み方は論述の書き方(キャリ協)の設問4の節と共通です。

解答用紙の制約と合格基準

解答用紙の末尾には、キャリ協と同じ注意書きがあります。

注:解答用紙の裏面および行外に記述されたものは採点されません。

出典: 第30回 キャリアコンサルタント試験 実技(論述)試験問題(日本キャリア開発協会)

合格基準は試験要項に次のように書かれています。論述は「満点の40%以上」、つまり50点満点で20点以上が必要で、同時に面接と合わせて150点満点で90点以上が必要です。

150点満点で90点以上の得点 ただし論述試験の満点の40%以上、かつ面接試験の評価区分の中の「主訴・問題の把握」「具体的展開」「傾聴」のいずれにおいても満点の40%以上の得点が必要

出典: 日本キャリア開発協会「試験要項」

この計算と、論述だけ良くても実技合格にならない構造は論述の配点と合格基準にまとめています。

キャリ協の論述との違い

同じ国家資格の論述でも、団体で読むものと問いの数が違います。

キャリ協(キャリアコンサルティング協議会)

事例記録を読む/設問1〜4(10・10・20・10点)/指定語句なし

JCDA(日本キャリア開発協会)

逐語記録(前半共通+後半A・B)を読む/問い1〜3(15・20・15点)/問い1に指定語句5つ

共通しているのは、相談者の問題とその根拠を相談者の言動に基づいて書く問い(キャリ協は設問3・JCDAは問い2)と、それを踏まえた「方針」を書く問い(設問4・問い3)がある点です。団体全体の違いはキャリ協とJCDAの違いにまとめています。

まとめ — 次に取る行動

  1. JCDAの過去問題から第30〜32回の論述問題を開き、問い1〜3の構造と指定語句を自分の目で確かめる(入手先は論述の過去問
  2. 問い1は、後半Aと後半Bの対応の違いを1つずつ対比し、5語すべてに線を引いたか数える
  3. 問い2の①と②が対応しているか、問い3が問い2を踏まえて「相談者の成長に向けて」書けているかを最後に見直す
  4. 第33回の学科・論述は2026年11月1日、JCDAの受験票は10月14日にマイページで発行されます(第33回の日程